認知症などで親の判断能力が落ちてきたとき、「銀行口座が動かせない」「実家を売るにも本人の意思確認ができない」といった壁にぶつかることがあります。その解決策として名前が挙がるのが成年後見制度です。けれど、いざ使おうと思っても「誰が、どこに、何を出せばいいのか」が分からず、最初の一歩で止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、成年後見(法定後見)を実際に利用するときの申立て手続きの流れ・必要書類・費用・期間を、家族の目線でひととおり整理します。制度のメリット・デメリットそのものは別の記事に譲り、ここでは「手続きをどう進めるか」に絞ってお伝えします。なお、金額や日数はあくまで一般的な目安で、ケースや管轄の家庭裁判所によって変わります。最終的な判断は、必ず専門家や公的窓口に確認してください。
慣れない申立ての手続きに戸惑うのは当然のことです。流れと費用の見通しが立てば、一歩ずつ確実に進めていけます。
成年後見の申立ては、誰でも自由にできるわけではなく、法律で申立てができる人(申立権者)が決まっています。代表的なのは本人・配偶者・四親等内の親族です。四親等内の親族には、子・孫・兄弟姉妹・おじおば・いとこ・甥姪などが含まれ、思っているより広い範囲の方が申立てできるケースが多いです。
身近に申立てができる親族がいない、あるいは親族が協力してくれないといった場合には、市区町村長による申立てという仕組みが用意されていることもあります。誰が申し立てるべきか迷うときは、後述の地域包括支援センターや家庭裁判所に早めに相談すると、自分のケースで動ける人がはっきりします。
「親本人が手続きに同意してくれない」「きょうだいの意見が割れている」というケースは珍しくありません。申立て自体は申立権者の一人ができますが、後々のトラブルを避けるためにも、できる範囲で家族間の合意をとっておくことが大切です。判断に迷う点は、専門家に相談しながら進めるのが安心です。
申立て先は、本人(後見を受ける人)の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立てをする家族の住所ではなく、あくまで本人の住んでいる地域が基準になる点に注意してください。遠方に住む親の手続きをする場合は、親の地域の家庭裁判所が窓口になります。
家庭裁判所では、申立てに必要な書類一式(申立書の様式や記載例)を用意していますし、各裁判所のウェブサイトからも様式をダウンロードできることが多いです。書き方に不安があるときは、提出前に裁判所の窓口で確認してもらえる場合もあります。まずは本人の住所地の家庭裁判所を調べるところから始めましょう。
手続きの全体像は、おおまかに次のような流れで進みます。ケースによって順番や有無が変わる部分もありますが、イメージをつかむための一例として参考にしてください。
申立書のほか、本人の戸籍や住民票、財産や収支がわかる資料、そして医師の診断書などを準備します。診断書の取得には時間がかかることもあるため、早めに動くのがポイントです。
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、書類一式と手数料を提出します。申立て時には面接の日程調整など、その後の流れについて案内を受けられます。
裁判所の担当者が、申立人や本人、後見人候補者などから事情を聞き取ります。本人の状況や家族の意向を確認するための大切なステップです。
本人の判断能力をより慎重に確認するため、医師の鑑定が行われることがあります。すべてのケースで実施されるわけではなく、診断書だけで進む場合もあります。
家庭裁判所が、後見を開始するかどうか、誰を後見人にするかを判断します。家族が候補者になることもあれば、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。
後見人を誰にするかは、最終的に家庭裁判所が本人の利益を最優先に判断します。家族が候補者として申立てをしても、必ずその人が選ばれるとは限らない、という点はあらかじめ知っておくとよいでしょう。
「うちのケースで誰が申し立てればいいの?」「どこから手をつければ…」という方へ。
状況を聞かせていただければ、次の一手を一緒に整理します。相談は無料です。
申立てにそろえる書類は、おおむね次のようなものです。詳細や様式は家庭裁判所によって異なるため、必ず申立て先の家庭裁判所の案内で確認してください。
このなかでも特に時間がかかりやすいのが診断書です。かかりつけ医に成年後見用の様式を渡して作成を依頼しますが、受診や記入に日数を要することがあります。書類集めの順番に迷うときは、診断書の依頼を早めに済ませておくと全体がスムーズに進みやすいです。
申立てにかかる費用は、大きく分けて裁判所に納める実費と、専門家に依頼する場合の報酬の二つがあります。金額はケースや管轄によって変わるため、ここでは一般的な目安としてご覧ください。
裁判所に納める実費としては、申立て時の収入印紙・郵便切手・登記手数料などがかかります。これらは比較的少額にとどまることが多いです。一方で、本人の判断能力を確かめるための鑑定が必要になった場合の鑑定費用は、数万円程度かかることがあるとされ、金額はケースによって幅があります。鑑定が行われるかどうかは事案によって異なります。
さらに、書類作成や手続きを司法書士・弁護士などの専門家に依頼する場合は、別途その報酬が発生します。また、後見が始まった後は、専門職が後見人になったケースなどで後見人への報酬が継続的に発生することもあります。これは申立て時の一時的な費用とは別のものです。具体的な金額感は、依頼先や本人の財産状況によって変わるため、見積もりの段階でしっかり確認しましょう。
申立てをしてから後見人が選ばれるまでの期間は、ケースによって差がありますが、一般的には数か月程度を見込んでおくと安心です。書類がそろっていてスムーズに進む場合もあれば、鑑定が必要になったり、調査に時間がかかったりして、より長くかかることもあります。
「親の口座が凍結されてすぐにでもお金を動かしたい」といった急ぎの事情があっても、申立てから利用開始までには一定の時間がかかります。だからこそ、必要になりそうだと感じた段階で早めに情報を集め、準備を始めておくことが、結果的にご家族の負担を軽くします。手続きを急ぐ事情があるときほど、専門家や家庭裁判所への早めの相談をおすすめします。
成年後見の申立ては、書類も流れも複雑で、最初の一歩でつまずきがちです。
「何から始めればいいか分からない」段階でも大丈夫。状況を一緒に整理します。相談は無料です。